相続などにより兄弟間、親族間で比較的高額な資産である不動産を共有で保有しているケースがあります。
しかしながら、不動産を共有している場合、所有者が一人で決めることができないため、例えば、次のように様々な場面で問題が生じがちです。
- 相続で取得した不動産を兄弟で共有していたが、更に相続が発生し共有者が増えてしまい、不動産をどう管理するのか、処分するのか決まらない
- 婚姻中の夫婦が共有名義にしたが、離婚に際して持分をどう分与するのか協議がまとまらない
- 賃貸物件の老朽化が著しく、建て替えをしたいが、共有者間で意見がまとまらない
共有名義にすること自体が悪いということではありませんが、予め共有名義にしておくことで生じ得るトラブルを想定し、共有の是非について熟慮しておくことが、将来の無用な紛争の回避につながります。
また、実際に、共有不動産でトラブルになってしまった場合は、その解決には多大な労力と時間がかかることが多く、早い段階で弁護士等の専門家にご相談されることをお勧めいたします。
1 共有物の確認
共有状態の不動産は、土地だけの場合、建物だけの場合、土地を含む建物の場合など様々な形態があります。
そして、その不動産の広さや形状によって共有を解消できる場合とできない場合があります。
例えば、土地が非常に狭い場合、それをさらに分割すると利用価値がゼロになり換価すらできないため現物分割はできません。
また、土地の形状がいわゆる旗竿のような形で入口が狭く奥に広がっている土地の場合は、入口部分と奥部分とで分割してしまうと、奥部分が道路に接しない囲繞地となってしまうので、分割は現実的ではありません。入口から奥の広い土地までのみ共有不動産(道路)とすることで分割することも考えられますが、共有不動産が残ったままとなってしまいます。
このように、共有の解消に際しては、まずは共有物の状態を見極めることが第一歩となります。
2 現物分割
共有物を物理的にそのまま分割する方法です。
しかしながら、実際には、次のような問題があることから、そのまま分割できないことが多いでしょう。
上述のように、土地の形状がいわゆる旗竿のような形で入口が狭く奥に広がっている土地の場合は、囲繞地となることを避けるべく入口部分を二つに分けることが考えられますが、接道の長さを十分に取れずに建物を建築又は再築することが難しくなる可能性があります。
そのような形状の土地ではないとしても、建ぺい率との関係で土地の分割後に建物を建てることができない可能性もあるため、注意が必要です。
また、分譲マンションのような区分建物は、物理的に分けることができません。
3 共有物の代償分割
土地や建物を第三者に売却することなく、すべての持分の取得を望む共有者の一人が他の共有者に金銭(代償金)を交付するなどして、共有関係を解消する方法です。
すべての持分の取得を望む共有者が、既に共有物である建物に居住している、共有不動産のうえに単独で建物を建てている、また、大部分の持分を保有しているといったような場合には、その者がすべてを取得する必要性・相当性が高いといえるでしょう。
ただ、他の共有者に対して支払う代償金の額が共有物の評価額に照らして相当な金額であるのかどうかが問題となります。実際、他の共有者が自己の持分を取得させること自体には同意していたとしても、代償金の額が僅少であるとして不満を述べて合意に至らないケースも多く見受けられます。
したがって、すべての持分の取得を望む者は、適当な共有物の評価額及び代償金の額の算出と交渉により、他の共有者から持分取得の同意を得る必要があります。
4 共有物の換価分割
共有不動産を、第三者に売却し換価して、その売却代金を共有持ち分に応じて代金を分配する方法です。
上記代償分割において共有者から同意を得られない場合、共有状態を解消するためには、換価分割をするほかないでしょう。
また、共有物の取得を強く望む者が居らず、かえって不動産の維持管理に負担が生じている場合には、早期に換価分割をして換価することが適当です。
売却金額についてすべての共有者の同意が得られれば、共有関係を解消するとともに共有者は持分に応じた金員を得ることができます。
5 裁判者を利用した共有分割
共有関係の解消に向けて共有者間の話し合いがまとまらないときは、裁判所の手続きを利用することになります。
裁判所における共有物分割調停又は共有物分割訴訟において、あらためて分割方法について話し合いを行います。
もし話し合いがまとまらないときは、調停は不成立なりますが、訴訟においては、代償分割や最終的には競売により換価されることになります。
調停や訴訟においてどのような分割方法により決着させるかは、共有物の取得を強く望むのか、持分に応じた適正な金員を得られればよいのか等によって異なり、意向、状況などに応じて適切な交渉戦略を立案し、裁判手続に臨む必要があるでしょう。
6 当事務所に相談するメリット
当事務所では、共有不動産にまつわる多くの問題の解決を支援してきた経験と実績を活かし、依頼者の意向に沿った共有状態の解消を実現すべく尽力致します。