企業にとって,取引先から売掛金、請負代金、貸金等が約定どおりに支払われないと,会社の存亡にも関わる危機的な状況になりかねません。
したがって、未払の問題が発生したときは、迅速に通告するとともに、硬軟織り交ぜた交渉、時には法的措置を講じる必要があります。
以下、債権回収に向けた対処方法等についてご説明します。
1 予め債権の内容を明確にしておく
まずは債権の内容をもれなく明記した契約書を交わすことが重要です。万一、未払となった場合に、仮差押命令申立等の保全措置や強制執行するのに必要な債務名義取得のための訴訟提起等の際には、どのような債権を有しているのか示す必要があるからです。
① 金銭の貸付け
お金の貸付けであれば,貸主、借主の明記は当然のこととして,返済期限,利率,返済方法等を明記します。
出来れば、借主に実印(社印)を押してもらい印鑑証明書を添付する,個人であれば身分証明書の写し等を提出してもらうようにしましょう。
② 売掛金
売掛金といっても、単発の取引の場合もあれば継続的な取引もあり得ますが、いずれにしても、どのタイミングで支払ってもらうのか、明確にしておくことが肝要です。
なお、相手方の信用力の低下等の事態に速やかに契約解除ができるよう、信用力の低下等を解除事由として定めておくとよいでしょう。
③ 請負代金
請負契約は、WEBサイトの制作や建設,運送業務と幅広い分野で締結されている契約ですが、類型的に,事後、システムや機能の追加を要求された、当初の契約に記載していない業務が加わったといったようなトラブルが起こりがちです。
口頭で依頼されて請け負う場合でも、その内容確認のために、その業務内容と追加費用発生の有無等について、メールやLINEにて内容確認の連絡をしておくとよいでしょう。
2 公正証書を活用する
公正証書は,契約の成立や一定の事実等を公証人が書証として作成して内容を証明してくれるものです。
特に、金銭消費貸借契約(お金の貸付け)の締結に際して,公正証書を作成しておくと、万一、約定どおりの支払いが無かった場合に、裁判を起こさなくても公正証書自体を債務名義として、直ちに強制執行の手続きに着手することができるというメリットがあります。そのため、債務者側に対しては、もし約定どおりの支払等をしなかったときは直ぐに強制執行されてしまうという緊張感を与え、約定どおりの支払を強く促す効果が期待できます。
したがって、最初にお金を貸し付けるときはもちろん、特に、売掛金や請負代金の支払等についてトラブルとなり、協議した結果、合意(示談)に至ったようなときは、公正証書を作成することが有用です。
3 債権回収に向けた具体的な手続等
債権回収に向けて、一般的には、次のような順序で債務者に対して支払いを求めていくことになります。
もちろん、債務者側の財産状態等によっては、順序を飛ばしたり、次の順序に進まない交渉を行ったり、あるいは、敢えて次の順序に進んだりしたりするなど、経験則に基づいた最適な手法を採用することが重要です。
債権回収においては、担当する弁護士の経験、手腕等によって差異が生じることも往々にして起こるため、弁護士費用の多寡のみで決めるべきではないといえるでしょう。
債権回収は、訴訟提起をして判決を得たらお終いではなく、むしろ、訴訟提起するかどうかの戦略的判断、そして、判決を取ってからの債権回収が勝負ですので、訴訟提起段階で提示された弁護士費用の多寡のみで決めてしまい、後で後悔することの無いようしたいところです。
① 内容証明郵便にて督促する
まずは,普通郵便等ではなく、内容証明郵便にて相手方に対して支払期限を定めて、支払いを督促します。
配達証明は必ずつけるようにしましょう。ただし、意図的に受け取らないといった債務者も散見されます。そのような場合には、特定記録郵便の活用も考えられます。
② 裁判所の手続きの利用(債務名義の取得)
内容証明郵便が届かない、債務者が受領したが何ら反応がないといったような場合は,裁判所の手続きの利用の検討に入ります。債務者が支払わないときに、いきなり強制執行によって確定的に債権回収を図ることはできず、強制執行のためには債務名義と呼ばれる判決等を得る必要があります。
この際,相手方に支払能力があるか否か(財産の有無等)を調査することも重要です。判決を取得しても,相手方に支払能力が全く無いときは費用倒れになってしまう可能性があるからです。ただし、時には、支払能力の如何にかかわらず訴訟提起等を行うべき場合もあり得るでしょう。
A 支払督促
支払督促は,通常の裁判と異なり、相手方が異議を申し立てない限り書面のみの手続きで迅速に完結するため,とても有効な手続きです。
ただし,相手方が異議を申し立てると通常の訴訟に移行するため、支払督促とするのか、次の訴訟提起とするのかは、慎重に判断する必要があります。
B 訴訟手続
裁判所に訴訟提起をして、請求内容の主張とそれを裏付ける証拠を提出し、自らが望む判決を出してもらう手続です。
裁判の審理の途中で和解協議を行うことも多くありますが、和解による決着が望ましいのか、判決を得て強制執行することが最良なのか、見極めが非常に重要です。
自己に有利な和解を勝ち取るために、主張立証の全体的な方針や和解協議を開始する時期等を見計らう必要があり、時には、早々に見切りをつけて判決に向けて主張立証活動を進めるなど、戦略的に訴訟遂行することがとても大切です。
③ 強制執行による債権回収
支払督促や判決により債務名義を取得したら、次は強制執行の手続きを行います。
判決等の確定により債務者が任意に支払ってくれれば良いのですが,相変わらず支払わないというようなこともあります。
その場合,相手方の資産を調査し、預貯金や不動産,自動車等を探し出して、それらの強制執行(差押,競売手続等)を申し立てて、債権回収を図ります。
この資産調査、強制執行の対象物の発見、覚知は、担当弁護士の経験、実績や直感、予測等によって大きく左右される場面といえます。単に強制執行手続自体を知っているだけでは債権回収につながらず、回収できそうな財産を探り当てることが重要だからです。
④ 強制執行までの財産の保全
訴訟提起等をする前の段階で、債務者にある程度の財産があることが確認できたとしても、上述のような裁判手続を行っていては判決が出た時点では既に財産が散逸、隠匿しまっているといった事態も想定されます。
そこで、将来の強制執行のために、仮に、財産を押さえておく仮差押命令等の活用が考えられます。
なお、本来的には、将来の強制執行のために活用する仮差押命令ですが、債務者に対して支払を開始せざるを得ないような状況とすることを目的として活用することも考えられます。
4 当事務所に相談するメリット
当事務所では,長年の多種多様な債権回収業務の経験と実績があり,債権の種類,金額,相手方の事業規模等を適切に勘案し,回収可能性の迅速な判断をご提示し,最適な回収方法をご提案いたします。
特に、回収の大前提となる財産の発見、覚知に関して、東京弁護士会の調査室嘱託の経験を活かした弁護士会照会の積極的活用の事例、ノウハウを有しており、大きな武器になっていると自負しております。
債務者には必ずある程度の財産があるはずだが、支払いに全く応じようとしない、実効的な債権回収に至っておらず困っているといったようなご相談者の方が居られましたら、是非、お問い合わせください。